咽喉頭異常感症とか、ヒステリー球とか、梅核気とかと言われるのどのつまり感は耳鼻咽喉科で対応されていますが、ときどき当院にも来られることがあります。中医学では気が滞り、痰が生成され、気と痰が上逆してのどに引っ掛かるために生じる症状とされます。梅核気に対しては半夏厚朴湯が主として使用され、柴朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、苓桂朮甘湯、四逆散、柴胡加竜骨牡蠣湯、大柴胡湯、柴胡桂枝乾姜湯なども使用されます。
この症例では「のどが詰まった感じ」に対して咽喉頭異常感症と診断し漢方薬を投与しましたが、無効でした。診断を体感異常症(口腔セネストパチーの言及もあり)と変更し、抑肝散加陳皮半夏を投与したところ、2日で改善が見られ、2か月でのどの詰まり感、食欲低下、摂食困難、体重減少、歩行困難、入眠困難、微熱、便秘、易疲労性、認知機能障害、口唇ジスキネジア、仮面様顔貌、マイヤーソン徴候、四肢の筋硬直、胸脇苦満が消失しました。
この症例は肝の異常から生じていることが分かります。肝は自律神経、運動神経、知覚神経の働きを制御足、筋活動も制御します。抑肝散加陳皮半夏が肝の虚熱と気虚を改善したことで、これらの症状が取り除かれたのでしょう。