ファーストバイト症候群
食事の一口目にズキッと顎が痛むのがファーストバイト症候群です。なぜ痛むのかというと、下顎の後ろにある耳下腺という唾液腺から急激に唾液が分泌されるためです。耳下腺には唾液が蓄えられていて、ものを食べようと口を動かすと導管を通って口の中に唾液が出てきます。
唾液は口の動きに伴って自然に出てくるだけでなく、レモンや梅干しのような酸っぱい食べ物を連想するだけでも出てきます。このように唾液の分泌をコントロールしているのが自律神経で、交感神経と副交感神経の両者が共同して耳下腺から唾液が出る量とスピードを調節しているのです。したがって、ファーストバイト症候群とはこの調節が崩れ、一気に唾液が出ようとして導管が無理に押し拡げられたために痛みが生じたものです。この現象は一口目に顕著で、二口目以降は軽減していきます。
この症例は2型糖尿病が隠れていたことがわかり、インシュリンや経口血糖降下薬役で治療しところ、痛みが改善しました。糖尿病性自律神経障害により、ファーストバイト症候群が生じていたのです。