私が発表した症例です。50代女性で右下の臼歯がしみるという主訴でしたが、歯には異常が見当たりませんでした。強い痛みが生じ、1分間ほどですぐに痛みが消失するということでした。また、口を動かすと痛みが生じることがあるといった点から、三叉神経痛第3枝と診断しました。
三叉神経痛の特効薬であるカルバマゼピンが無効だったため、漢方薬を試してみることにしました。風寒、水滞、肝鬱と弁証して葛根湯、五苓散、抑肝散を2週間分処方したところ、痛みは軽減しました。その後少しずつ方剤の組み合わせを変更し、最も効果がある方剤を探してみました。最終的に葛根湯、桂枝加朮附湯の組み合わせで痛みが消失しました。
葛根湯、桂枝加朮附湯の組み合わせは葛根加朮附湯と似ています。そのため、葛根加朮附湯の単剤処方でもよかったのかもしれません。しかし、冷えもある患者さんだったので、桂枝の温める効果も症状改善に寄与した可能性があり、葛根湯、桂枝加朮附湯の併用の方がよかったのかもしれません。
50代 女性 パート(事務職)
主訴
右下臼歯部がしみるように痛い
現病歴
13年前に右下臼歯部が痛くなり、歯科で診てもらったが、痛みの原因がわからなかった。その後我慢していたが、三叉神経痛かなと思って3か月前に脳神経外科を受診した。テグレトールを処方されたが、無効だった。2か月前に口腔外科を受診し、テルネリンを処方されたが無効だった。
既往歴
高脂血症、めまい、逆流性食道炎 内科で薬物療法中
現 症
口を動かすと強い痛みが1分程度生じて、消失する。159㎝、59㎏
診 断
三叉神経痛 第3枝
問 診
突然頭が痛くなる、驚きやすい、足が冷える、汗をかきやすい、鼻水やくしゃみがよく出る、イライラしやすい、耳鳴りがする、立ちくらみがする、むくみやすい、便秘がち、食欲あり
所 見
白苔、舌質淡紅 胖大、頸部の筋の凝り
弁証1
風寒、水滞、肝鬱
処方1
葛根湯、五苓散、抑肝散
経過1
2週間後、痛む頻度、強度が減少した。その後少しずつ方剤の組み合わせを変更し、最も効果がある方剤を探した。しかし、大きな変化はなかった。
経過2
3か月後
弁証2
風寒、寒湿阻絡
処方2
葛根湯、桂枝加朮附湯
経過3
3週間後今までの中で一番効果を感じる。同処方継続。
経過4
5か月後、痛み消失
葛根湯、桂枝加朮附湯の組み合わせは葛根加朮附湯と似ています。そのため、葛根加朮附湯の単剤処方でもよかったのかもしれません。しかし、冷えもある患者さんだったので、桂枝の温める効果も症状改善に寄与した可能性があり、葛根湯、桂枝加朮附湯の併用の方がよかったのかもしれません。