両側性で無痛性の涙腺、耳下腺、顎下腺腫脹をきたすミクリッツ病の大部分はIg-G4関連疾患であることがわかっています。この論文で報告されている症例は下顎骨臼歯部の下顎骨体下方部に生じた腫瘍性病変です。
画像所見で下顎管との連続性があり、下歯槽神経から生じた神経鞘腫や神経線維腫が疑われました。摘出手術後の病理組織検査でこれらの疾患ではないことがわかりました。腫瘍内に多数のリンパ球とリンパ濾胞、胚中心が見られました。濾胞性リンパ腫(悪性リンパ腫の一種)が疑われましたが、免疫組織学的にIg-G4陽性形質細胞が多数見られたことなどから、Ig-G4関連疾患であることがわかりました。
Ig-G4関連疾患によって唾液腺などに生じる癕篇は炎症による反応性増殖なので、ステロイドで
炎症を抑えれば消失します。この症例でも術前に炎症だとわかっていれば手術をする必要がなかったのですが、血液検査で抗Ig-G4抗体を測定することを思い浮かべるのは難しそうです。