木本裕由紀先生が毎月主催されている中医学研究会に参加しました。東儀洋先生(赤羽牧羊記念クリニック)の症例は首から肩にかけての痛みが主訴でした。半年前から痛みが続いているとのことです。膩気虚(便秘、下痢、胃炎、胖大舌、沈細脈)、心血虚(不眠、動悸、不安、乾燥肌、舌質淡、沈細脈)、肝鬱(ストレスが多い、多弁、胸脇苦満経度)、血瘀(チクチクした痛み)、経絡阻滞の証が見られました。
幾つかの漢方薬(方剤)を組み合わせて対応することが考えられますが、東儀先生が処方されたのは加味帰脾湯の1剤だけでした。症状は徐々に改善し、1か月後にはすっかり良くなりました。
このような首肩の痛みに対しては、黄連解毒湯、越婢加朮湯、二朮湯といった方剤がよく用いられます。痛みが長引いている場合には大黄牡丹皮湯、桂枝茯苓丸もあります。これらは痛みの症状に対応する標治(対症療法)の方剤です。これに対して痛みが生じたそもそもの原因に対応するのが本治(根本治療)です。加味帰脾湯の投与で心の気血両虚、心脾両虚、肝鬱を改善し、痛みを取り除くことができました。本治することで経絡阻滞や血瘀も解消されたのでしょう。