中国で1800年前に生じたエピデミックに対する治療法を解説した医学書が張仲景著『傷寒論』です。傷寒とは当時のエピデミックに対する病名ですが、それがどういった現在の病名に当てはまるのかはわかっていません。傷寒論で用いる薬は生薬をブレンドした漢方薬であり、現在でも当時のブレンドが中国でも日本でも重用されています。
傷寒論では病気の進行時期ごとに太陽病、陽明病、少陽病などと六つの病位に分けて解説されています。日本でも繰り返し生じるエピデミックに対して、傷寒論で紹介されている漢方薬が用いられてきました。
中国と日本でなぜか六病位の順番が異なっています。日本では太陽病、少陽病、陽明病の順となっています。この違いは1700年頃に生じたようです。当時日本で流行っていた傷寒は天然痘、麻疹、インフルエンザでした。これらの病気は二峰性の発熱が生じ、太陽病、少陽病、陽明病の順で進行したことが順序変更の理由だったようです。傷寒といっても傷寒論当時の1800年前の病気と300年前の日本の病気は別のものだったようです。