東洋医学では、口腔は経絡(気血が流れる道)を通じて全身と広く深く関連していることから、お口の病気は五臓六腑(内臓)の失調が原因であると捉えられています。近年、漢方は歯科にも広く普及しはじめ、最近では口腔を一つの臓器として捉え、検査や薬物によって症状や病気に対応していく「口腔内科」の治療が重要視されています。
そこで、歯科領域の中でも漢方治療が特に効果的なドライマウス(口腔乾燥症)を例に考えてみましょう。たとえば、慢性病や老化によって全身の体液が不足すると唾液量も減るため、お口が乾いてドライマウスの症状があらわれます。その場合は、水分を補いからだを潤す作用を持つ生薬を組み合わせた漢方薬を処方します。また、ストレスが原因でからだの気のめぐりが悪化すると体液や血液の循環が滞るため、唾液の分泌量が減ってドライマウスを引き起こしてしまいます。そのようなケースでは、気をめぐらせて体液や血液を円滑に循環させる効果のある漢方薬を処方します。つまり、漢方医学ではドライマウスを全身の病気とみなし、免疫力の低下が原因であると解釈するのです。