臓腑それぞれで気逆の症状の現れ方に違いが見られます。
肺気上逆
肺は粛降作用によって全身の気を下に降ろす働きがあります。この働きが狂うと気が上昇し、咳や喘息、痰が生じます。肺気上逆には麦門冬湯、半夏厚朴湯を用います。
胃気上逆
消化器から取り込んだ水穀の気は胃で降濁し、脾で昇清します。胃の働きが狂うと胃気が上に昇り、悪心や嘔吐、ゲップ、しゃっくり、胃酸の逆流による胸焼けが生じます。胃気上逆には半夏厚朴湯、小半夏加茯苓湯、神秘湯、霍香正気散、麻子仁丸などを用います。
肝気逆
肝は全身の気を上に昇らせていますが(昇発)、怒ると気が過剰に上昇します。その結果、頭痛、めまい、顔面紅潮、吐血、喀血が生じます。肝気上逆に対しては五磨飲子を用います。
腎気逆
腎は気を臍下丹田に収納しています。腎気が弱くなると気が腹部から胸部に駆け上がり、子豚が駆け回っているような感覚を覚えます。奔豚気といい、パニック障害の症状と捉えられている病態です。奔豚気に対しては苓桂朮甘湯、苓桂甘棗湯、奔豚湯などが用いられます。