西村理行先生は口腔外科時代の2年先輩であり、大学院の2年先輩でもありました。病棟では西村先生がPOSシステムに基づいてプロブレムリストを作成し、プロブレムごとに克明なカルテ記載をされていました。当時、そのようなカルテ記載をしている人は他になく、私も真似てひたすらカルテを書き連ねていました。
大学院時代には口腔がん患者に時折みられる悪性腫瘍随伴症候群、中でも高カルシウム血症を研究されていたと思います。ニューヨークメディカルセンターとテキサス大学サンアントニオ校で研究されるようになってからは、骨代謝に関する細胞内シグナル伝達機構の研究を継続されています。
西村先生のライフワークをされているのが骨の成長、特に内軟骨性骨形成です。そこにはSOX9、TRPV4、p54nrb、Ard5B、Phf2、Ihh、FoxC1、Sema4dといったタンパク質が登場します。西村先生が注目して取り上げられたのがZhfx4、osterix、Runx2です。
転写プラットフォーム因子のZhfx4に異常があると、8q21.11 microdeletion syndromeという骨疾患が生じます。転写因子のosterixが欠損すると、軟骨はできても基質小胞ができず、骨化が起こらなくなります。転写因子のRunx2が欠損すると、骨芽細胞場分化せず骨形成が生じなくなります。この3者は共同して働くことが確認されています。