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骨髄炎

論文・記事 2017年04月01日

難治性の慢性下顎骨骨髄炎
骨の表面は硬く緻密な骨皮質で覆われ、内部は軟らかく血行豊富な骨髄でできています。骨髄に細菌が侵入して炎症が生じた状態を「骨髄炎」といい、初期に適切な対応を行えば短期間で治癒しますが、放置しておくと慢性化して難治性となります。
感染した初期の段階を急性骨髄炎といいます。痛みや腫れ、排膿、熱感、リンパ節の腫脹、発熱などが生じ、急性下顎骨骨髄炎では病変前方部分の歯の動揺、打診痛(弓倉症状)、下唇の知覚麻痺(ワンサン症状)など特徴的な症状が見られます。原因の除去や抗生物質の投与により治癒は可能ですが、途中から慢性骨髄炎に移行する場合や、初期から慢性骨髄炎が生じるケースもあります。
慢性骨髄炎が生じると粘膜が破れて骨が露出したり、骨の一部が腐って顎骨から離れグラグラしたり(腐骨分離)します。エックス線写真ではスリガラス状の骨硬化像やモザイク状の骨変化、骨柩の形成、骨膜の肥厚が特徴的に観察されます。
骨髄炎は上顎骨でも下顎骨でも生じますが、下顎骨で生じる割合が高いのは骨の性質に相違があるためです。上顎骨は軟らかく血行が豊富で、下顎骨は硬くて血行に乏しいという特徴から、上顎骨は点滴や内服により体内に取り込んだ抗生物質が骨髄まで届きやすく、下顎骨は届きにくいのです。従って上顎骨は骨髄炎に罹っても治りやすく、下顎骨は治りにくいともいえます。
骨髄炎の原因
歯性感染症
骨髄炎の原因は主に3種類あり、最もよく見られるのは虫歯が進行して根の先から周囲の骨に拡がるものです。根管治療に用いた薬剤が根尖外に漏出することにより、骨髄炎が生じる場合もあります。
顎骨病変
骨折により皮膚や粘膜が破れて骨が露出すると、そこに細菌が感染して骨髄炎が生じることがあります。また、骨にのう胞やがんなどの腫瘍が生じると、付近の虫歯や義歯による細菌感染が波及して骨髄炎が生じる他、病変摘出後の術後感染や受け口など顎変形症に対して骨切り術をした後の術後感染でも、同様に骨髄炎が生じる場合があります。
血行感染
身体のどこかに感染性の慢性炎症があると血液中に細菌が侵入し、全身を巡って骨に細菌が棲みつき骨髄炎が生じることがあります。
症例
50代 女性
主訴
左顔面の痛み
現病歴
顔面皮膚、筋肉、口腔粘膜、歯に異常は認められなかった。
エックス線所見
CTにて左側上顎洞底粘膜の肥厚を認めた。
治療経過
左側上顎臼歯部の骨を試験切除し、組織学的に「骨髄炎」の診断を得た。抗生物質、筋弛緩薬、漢方薬、ブロック注射、表面麻酔薬塗布などの治療にて痛みが軽減してきている。
病理組織所見
Osteomyelitis,Nonspecific(非特異的骨髄炎)
細胞異型性は乏しく組織学的悪性所見は明らかではありませんが、念のため放射線画像的な悪性所見の有無の検討が望まれます。

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