舌が痛いといって患者さんが来院された際に、私はその舌の痛みを和らげること、できれば痛みをなくすことを考え始めます。しかし、それが患者さんの望みとは限りません。
舌が痛いといってこられる患者さんの中に「舌がんになったのではないか」ということを心配して来られる方が少なくないのです。診察の結果、「どこにもがんはできていません」「この痛みは薬の治療でよくなる可能性がありますので薬を出しましょう」というと、「舌がんでないことがわかってホッとしました。薬を飲んでまで治したいとは思いません」といって解決してしまうことがあります。
舌が痛いので舌を注意して調べていると、「舌が痛いのは最近入れたかぶせ物が舌を刺激しているように思うので、歯を診て欲しい」といわれることもあります。実際にかぶせ物に問題があって、歯を治せば舌が治る場合もあります。
このように患者さんの望みを治療者である私が先走って推測し、治療法を一方的に決めつけることは間違いのもとです。舌の痛みの例は少し詳しくお話を聞けばすぐにその間違いに気が付きますが、患者さん自身がどのようにしたいかをはっきりとわかっていない場合もあります。そのような場合には「動機づけ面接」という手を使うことができます。