私の発表は口臭症患者が感じている口臭の程度と口臭の測定結果がどの程度一致しているのかを調べたものです。224名の患者全体では治壅前後に同じように変化がすることがわかりました。変化とは、治療前と比べて治療後は口臭症患者が感じている口臭の程度が低下し、口臭の測定結果も低下しているということです。
このように全体でみると予想通りの結果というか、当たり前の結果となりました。しかし、中には治療してもよくならないと訴える患者さんがいることがわかっていました。そのような患者群を調べてみると、主観的には治療前よりも治療後に悪化していることが確かめられました。しかし、口臭の測定結果はこのような患者群でも改善していることが確認できました。
客観的に口臭が軽減しているにもかかわらず、なぜ悪化したと感じる人たちがいるのでしょうか。そこが人間の感覚の不思議なところです。ある程度の口臭が出続けていると、ヒトは臭いを感じないものです。「馴化」といって、自分の臭いに鼻が馴れてしまい、感じることができません。口臭症治療により口臭が軽くなったりなくなったりすると鼻が敏感になります。治療によりよくなったといっても、体調の変化や時間帯によっては口臭が生じたり強くなったりするときがあります。治療前には感じていなかった口臭が、良くなったばかりに敏感に感じ取れるようになるのです。