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下降抑制系(痛みに関する理論)

口腔顔面痛 2019年08月16日

痛みを抑える仕組み
末梢からの痛み刺激に対し、中枢から痛みを抑えて感じにくくする働きを下降抑制系といいます。下降抑制系は脊髄後角や三叉神経節などで1次ニューロンから2次ニューロンへの痛みの伝達を抑制します。
脳や脳幹から脊髄後角や三叉神経節のシナプスに降りてくる抑制性ニューロンや、抑制性介在ニューロンから神経伝達物質が放出されます。内因性の鎮痛物質であるノルアドレナリン、セロトニン、エンケファリン、GABA、グリシンなどが1次ニューロンからの神経伝達物質の放出を抑制し、2次ニューロンでの活動電位の発生を抑えます。
セロトニン
自由神経終末にあるセロトニン受容体に抑制性介在ニューロンから放出されたセロトニン(5-HT)が結合すると痛みが生じます。従って、末梢ではセロトニンは発痛物質となります。一方、脊髄後角のシナプスではセロトニンは痛みを抑える働きをします。
1次ニューロンの神経終末部に存在する5-HT1受容体にセロトニンが結合すると、サイクリックAMPやリン酸化酵素の働きが抑制されます。するとリンが付くと閉じてしまうカリウムチャンネルが開き、カリウムイオンが放出されて膜電位が低下し、最終的にはグルタミン酸やサブスタンスPの放出が抑制されます。
2次ニューロンでも同様の反応が生じ、カリウムチャンネルが開くことで活動電位の発生が抑えられます。さらにセロトニンは抑制性介在ニューロンの5-HT 3受容体に結合し、GABAやグリシンの放出を促進します。これらの働きにより、セロトニンは鎮痛効果を発揮します。
ノルアドレナリン
1次ニューロンの神経終末部に存在するノルアドレナリンα2受容体に抑制性介在ニューロンから放出されたノルアドレナリンが結合すると、サイクリックAMPやリン酸化酵素の働きが抑制されます。するとリンが付くと閉じてしまうカリウムチャンネルが開き、カリウムイオンが放出されて膜電位が低下し、最終的にはグルタミン酸やサブスタンスPの放出が抑制されます。
2次ニューロンでも同様の反応が生じ、カリウムチャンネルが開くことで活動電位の発生が抑えられます。さらにノルアドレナリンは抑制性介在ニューロンのノルアドレナリンα1受容体に結合し、GABAやグリシンの放出を促進します。これらの働きにより、ノルアドレナリンは鎮痛効果を発揮します。
GABA
抑制性介在ニューロンから放出されるγ-アミノ酪酸(GABA)がシナプス前の1次ニューロンのGABAB受容体と結合すると、サイクリックAMPやリン酸化酵素の働きが抑制されます。するとリンが付くと閉じてしまうカリウムチャンネルが開き、カリウムイオンが放出されて膜電位が低下します。最終的にはグルタミン酸やサブスタンスPの放出が抑制されます。
GABAがシナプス後のGABAA受容体と結合すると塩素イオンが細胞内に流入し、膜電位が低下して活動電位の発生を抑制します。これらの働きにより、GABAは鎮痛効果を発揮します。

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