予防歯科学講座天野敦雄教授の講演はデンタル・バイオフィルムが中心の内容でした。バイオフィルムを構成する細菌は約1000種類が報告されていて、多い人では約300種類が観察されるそうです。バイオフィルムは最初に胎内の羊水から供給され、出生時に産道や母体の糞便からも移行します。バイオフィルムの細菌構成は10代でほぼ完成し、その後はほとんど変化しません。したがって、この時期までによい細菌叢を獲得することが重要となります。
悪玉菌の代表格であるポルフィロモナス・ジンジバリスは18歳以降に感染することがわかっています。18歳までに善玉菌を培い、ポルフィロモナス・ジンジバリスの感染を防ぐようにできればよいわけです。現時点ではポルフィロモナス・ジンジバリスの感染を防ぐ予防薬やワクチンはありません。したがって、ポルフィロモナス・ジンジバリスの感染や増殖を起こしにくい口腔内環境を整えることが実際にできる対応策となります。
ポルフィロモナス・ジンジバリスの感染・増殖を促す要因は栄養、湿度、嫌気環境、至適pHです。この中で栄養となるものは血液中のアルブミンやグロブリン、ヘム鉄です。歯周病が進行すると歯周ポケットから出血が生じ、この悪玉菌に栄養を供給することになってしまいます。そのため、歯磨きなどで口の中を清潔な状態に保つことがよい細菌叢を保つために重要となります。