口臭自体は実際に発生するものであり、感覚の異常ではありません。重度の歯周病にかかっていたり、寝たきり状態でべったりと分厚い舌苔が付着していたり、扁桃腺が大きく晴れて赤くなっていたりすれば、離れていてもわかる口臭が発生します。
一方で、話してもなにも口臭を感じない人がひそかに口臭に悩んでいることがあります。このような人では、口が乾く、舌がヒリヒリする、苦い味がする、といった症状を自分が口臭を発生させている証拠だと勘違いすることがよくあります。このような問題を感覚障害ととらえ、その検査法や治療法を解説しました。
この記事は春先に東京医学社から執筆依頼されました。執筆陣の多くは大学で診療と研究に従事する耳鼻咽喉科医です。歯科からは4篇、解剖学1篇、心療内科1篇、精神科1篇が寄せられています。
人間の五感といえば嗅覚、視覚、触覚、味覚、聴覚です。この順番で脳神経が感じ取るようになっています。口腔内の感覚はこの内で触角と味覚です。もう少し専門的に分類すると、触角は非特殊感覚、味覚は特殊感覚に分類されます。非特殊感覚は体性感覚(触覚、圧覚、冷覚、温覚、痛覚、深部感覚)と内臓感覚(口腔内にはありません)に分かれます。
痛覚の問題として、舌痛症、舌咽神経痛、三叉神経痛、口腔粘膜炎、舌炎、口内炎、金属アレルギーが取り上げられています。触角の問題としては外傷や手術後の抹消神経麻痺が取り上げられています。口腔セネストパチーや口腔乾燥症も触角でしょうか。
私が担当した口臭は嗅覚で口腔の間隔ではありません。しかし、口腔の触角、温覚、痛覚、味覚の異常を自己の口臭と関連付けて考える問題があります。