サホライドは1960年代に大阪大学歯学部で開発されました。当時は子どもの虫歯が急増し、治療が間に合わない状態でした。従来は硝酸銀溶液やフッ化ナトリウム溶液が虫歯の進行を抑えるために用いられていました。しかし、その効果は限定的でした。その時代に登場したサホライドは虫歯の進行をストップし、多数歯う蝕対策の救世主となりました。予防歯科が発展した現在では、子どもの虫歯が著しく低下し、サホライドを使う機会は少なくなりました。
少子高齢化が進む中で、サホライドが再度注目されています。高齢者の増加に伴い、根面う蝕が増えているからです。高齢者の歯根部分にできる虫歯(根面う蝕)は、多数の歯に次から次にと発生します。歯冠にできる通常の虫歯と違い、虫歯の範囲や深さの確認が難しく、そのためにどこまで削ればよいのかがはっきりしません。歯根は歯冠よりも細く、歯の全周を取り巻く根面う蝕を削り取ると歯が細くなって折れてしまう恐れもあります。そもそも根面う蝕は進行が遅く、進行しない場合もあります。そのため、根面う蝕は今すぐに削る必要があるのかどうか、判断が難しいのです。このような場合にサホライドを塗布すれば根面う蝕を削らずに治療を終えることができます。こうしてサホライドがリバイバルしました。