鋪野紀好先生(千葉大学大学院医学研究院地域教育学)が「臨床推論と診断エラー」について解説されました。診断には直感で行うものと理詰めで行うものがあり、二重仮定理論といいます。直感で行うものはパターン認識といい、理詰めで行うものの代表例で疾患仮説を想起して行う方法が仮説演繹法です。
パターン認識は時間がかからずてきぱきと診療を進めていけますが、診断間違いも生じやすくなります。思い込みによる診断エラーをヒューリスティックスバイアスと言います。収集したデータの中にその診断に当てはまらないものがある場合は、立ち止まって考え直すことが重要です。
仮説演繹法は収集したデータから思い当たる診断名を列挙し、一つひとつ検討していく方法です。その際に役に立つのがセマンティッククオリファイアーです。これは収集したデータをより上位の医学概念に置き換える作業です。
「二日前から右側の耳の下が腫れている」という訴えであれば、「急性」「片側性」「耳下腺」「腫脹」と置き換えます。耳下腺に何らかの問題があることがわかり、推論を澄ます。急性であることから、腫瘍や自己免疫疾患は除外されます。片側性であることから、ウイルス感染ではなさそうです。腫脹は細菌感染による炎症や唾石による唾液の流出障害による唾液の停留を疑わせます。
セマンティッククオリファイアーによってキーワード検索がしやすくなり、答を見つけやすくなるという利点もあります。