第14回 日本口臭学会において研究発表を行いました
2023年6月3日・4日の2日間、第14回日本口臭学会が福岡市で開催され、臨床系シンポジウム「ポストコロナ時代の口臭診療を考える」においてシンポジストとして講演しました
ポストコロナ時代のの口臭診療を考える 開業医(歯科)の立場から
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が鎮静化の様相をうかがわせる中で(2023年4月現在)、ポストコロナに向けての口臭診療について歯科開業医の立場から検討するようにと大会長から課題を与えられた。ポストコロナを展望するためには、その前にコロナ禍での口臭診療が開業医においてはどのような状況であったのかを調査する必要がある。COVID-19の症状や後遺症として口臭が問題として取り上げられ樋口2ることは少ないようである。一方で、「新しい生活様式」によって口臭症患者が抱える口臭恐怖や対処法に何らかの影響が生じたと推測された。また、コロナ禍では歯科医院においても感染対策が強化され、診療に一定の制約が生じた。特に感染が懸念されることから、官能検査については個々の歯科医院で難しい判断を迫られたのではないかと推測された。今回はこのような歯科医院の状況をアンケート形式で調査した。
調査に先立ち当院の状況を振り返って調べてみた。大きく変化したことは口臭症患者の減少であり、コロナ以前の3年間の年平均新患数は41.0名であったが、コロナ禍では14.3名と激減した。口臭症患者にとってコロナ禍はよい側面と悪い側面があった。よい側面は「マスクをすると安心できる」「距離を取っても不自然ではない」といった点であり、悪い側面は「マスクをするようになって自分の臭いを感じるようになった」「マスクを触る仕草が気になる」といった点であった。「コロナ後にマスクをしなくなると心配」という声もあった。官能検査は従来通りに実施し、官能検査時以外の診察時にはお互いにマ院長スクをした。メインテナンス時の官能検査は遠慮して断る患者も一定の割合で見られた。
口臭診療を実施している歯科医院へのアンケートでも「大幅に減った」が34.8%、「減った」が21.7%と当院と同様の傾向がみられた。患者の訴えも当院の結果と同様のものが多かった。口臭診療自体を中止した歯科医院や官能検査を中止した歯科医院もあったが、問診を綿密にして患者のコロナ感染リスクを評価したうえで官能検査を実施した歯科医院も多かった。
コロナ禍で患者数が減少したのは、感染拡大防止のために患者が自主的に受診抑制した結果とも推測された。また、コロナ前から口臭に悩んでいた患者がマスクをしたり、距離を取ったりすることで悩みが軽減したためとも推測された。ポストコロナではこのような患者の悩みが再燃し、患者の増加が予想される。マスクを外すことに対する恐れや人に近づいて話すことへの恐れへの対応も必要となるであろう。今後の新規感染症に対しては、官能検査に関して学会としての方針を示すことが求められるであろう。