私が口腔がんの診療に関与していたのは1987年から1990年代半ばのことです。当時の口腔がんに対する化学療法といえば、プラチナ製剤のシスプラチン(CDDP)とフッ化ピリミジン系製剤の5フルオロウラシル(5FU)の点滴でした。シスプラチンの毒性を抑えたカルボプラチン(CBDCA)も登場しましたが、他にはメトトレキサート、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン/ビンブラスチン程度でした。やがてパクリタキセル(PTX)が加わることになります。
CDDP/CBDCA+5FU一辺倒の時代が2008年まで続いたようですが、新時代を切り開いたのが分子標的薬(生物学的製剤)のセツキシマブ(Cmab)です。2017年からは免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが登場し、その少し後にペムブロリズマブが加わりました。免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍細胞のPD-L1を標的とし、PD-L1が発現している場合をCPS陽性と言います。