日本大学口腔内科学講座の今村佳樹教授の講演です。舌痛症の原因については諸説ありました、神経障害性疼痛であるという説が有力となった時期がありました。その根拠として、筋活動を観察した研究と病理組織標本を観察した研究があります。
舌痛症患者の筋電図を調べてみると、患側と健側とで瞬目反射検査(Blink-reflex)で波形に違いが見られました。瞬目反射を調べることで三叉神経や顔面神経の異常の有無を調べられます。瞬目反射に関係する眼神経は三叉神経の1番目の枝であり、舌の痛みを脳に伝える舌神経は三叉神経の3番目の枝である下顎神経から枝分かれします。
瞬目反射ではR1(早期反射)とR2(遅延反射)という2つの筋活動の波形が観察されます。瞬目反射が障害されると、正常では見られるR2波の減衰が見られなくなります。舌痛症患者にこのR2波の減衰が見られないという瞬目反射の障害が観察されたことから、舌痛症は三叉神経の障害による神経障害性疼痛だと考えられました。
しかし、この研究結果には疑問点もあります。瞬目反射が障害されるとR1波にも変化が見られるのですが、舌痛症患者では見られませんでした。R1とR2で矛盾する結果であり、神経障害性疼痛が生じているのかどうかが判然としない状態と言えます。
Jääskeläinen, S. K., Forssell, H., & Tenovuo, O. (1997). Abnormalities of the blink reflex in burning mouth syndrome. Pain, 73(3), 455-460.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304395997001401