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時間をかけた丁寧な治療

症状・病態 2024年10月30日

保険治療では個々の治療に対して一律の保険点数(治療費)が定められているため、治療に時間をかけようがかけまいが、治療費は同額です。極論すると、手抜き治療でも確実に診療報酬が得られるシステムとなっているのです。これが悪徳歯科医をはびこらせる元凶ともいえますが、遵法と勤勉を誇る我が国の歯科医療界では、性善説に基づいた上記のような保険制度が実施されているのです。

確かに、全国一律の医療サービスを提供するためにはこのシステムが便利でしょう。国民皆保険制度はこの国を世界一の長寿国に育て上げました。しかし日進月歩で医療技術が進化する今、高度な治療を時間をかけて丁寧に提供しようとする医療には適さないシステムであるといえます。

虫歯治療の中に「単治・覆髄」というものがあります。虫歯が進行して歯の中の神経までおよぶと、痛みが生じます。そこで虫歯を削り取り、神経を保護する治療が「覆髄」です。虫歯を削る際、虫歯の部分のみを削り取り、虫歯ではない健全な部分まで削らないようにするためには細心の注意が必要です。特に神経に近い部分を削る際には、削りすぎて神経にダメージを与えないように少しずつ慎重に虫歯を取り除いていく必要があります。虫歯の切除後はレジンやグラスアイオノマーセメントを詰めて封鎖しますが、神経を保護するため覆髄剤という薬を使用する場合もあります。

上記の治療は虫歯治療の基本であり、30分以上の治療時間を要します。虫歯を治すためには必要最低限の重要な治療といえますが、治療費が極めて安価なのです。虫歯を削る作業が「齲蝕処置」40点、「覆髄」が25点です。1点が10円なので、歯科医院に入る治療費は計650円となります。当然ながら、本来であれは時間をかけて丁寧に治療すべきですが、この低価格ではとても採算が合いません。結局、そのしわ寄せは患者様に及ぶことになるのです。

歯科治療にはこのように不採算な治療分野が幾つもありますが、根管治療や入れ歯治療もその一端です。虫歯が進行して神経が侵された際、神経を抜く治療が根管治療(歯内療法)ですが、長い時間を要する複雑な治療です。神経を抜いて根管内をきれいに拡大消毒するためには、30分以上の治療が何回も必要となりますが、治療1回当たりの保険点数は26~40点、すなわち400円以下なのです。

このように、然るべき治療を行うほどに医院経営が苦しくなる治療分野が実際にあるのです。労力に見合った妥当な金額に治療費を設定することさえできれば、この問題はたちまち解決するはずですが、1000兆円を超す財政赤字を抱える政府にその力はありません。保険内で治療を行う限り、解決できないのが現状なのです。

現段階での有力な解決策は、患者様に適切な治療費を支払っていただく自費治療を取り入れることです。当クリニックでは、時間をかけた丁寧な虫歯治療を求められる患者様に対して、専用器具を用いた最新かつ高度な虫歯治療や歯内療法を行っています。

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