身体に生じる症状や病気を部位別・臓器別に捉える西洋医学に対し、生活と体質の改善を目的に精神と肉体を一体とみなした「全人的治療」を行うのが漢方医学です。また、漢方薬は作用の異なる多くの成分で構成されており、半健康状態から慢性病まで幅広い症状や病気に対応できることが特徴です。実際の診療ではまず舌診などを行い、患者様の体質と自覚症状を重視したうえで「証」を決定し、個人に合ったいわば「オーダーメイドの治療」を行っています。
近年、歯科領域では口腔を一つの臓器として捉え、検査や薬物によって病気に対応する「口腔内科」が重要視されていることから、漢方薬による治療が注目を集めています。たとえば漢方治療が効果的とされるドライマウス(口腔乾燥症)は、漢方医学では免疫力の低下による全身の病気とみなされます。従って、慢性病や老化によるドライマウスには、水分補給の作用を持つ生薬を組み合わせた漢方薬を処方します。一方、ストレスが原因のドライマウスには、気をめぐらせて体液や血液を円滑に循環させる効果のある漢方薬を処方します。