虫歯を削った後、銀色の詰め物(インレー)を入れたくない方へ
「虫歯は治さなくてはいけない」
「虫歯を削った後には穴があいてしまう」
「穴は塞いで元のような形に戻し、再び噛めるようにしたい」
当然そう考えるでしょう。同時に次のようなことを考えているかもしれません。
「銀歯で穴を塞ぐのだろう」
あるいは、
「歯医者で診てもらったら、虫歯を削って銀色の詰め物を入れるといわれた」
あるいは、
「家族の口の中を見ると、歯の一部が銀色になっている」
だから、「虫歯を治すということはそこに銀を詰めることだ。」そして、憂うつになります。
「虫歯は治さなければならないが、銀歯は恥ずかしいからいやだ。」
確かにその通りです。服に穴があいてその部分を直す際は生地と同じ色の糸で繕いますよね。家の壁や自動車の車体を直す際には、当然同じ色の壁材や塗装剤を塗ります。歯に開いた穴も歯と同じ色の材料で直すのが当たり前、銀色なんて論外と感じるでしょう。当然と言えば、至極当然の考え方なのです。
しかし、現実には銀色の詰め物が多いのです。事情を説明しましょう。銀色の詰め物の正体は「金銀パラジウム合金」です。保険で歯に詰め物を入れたり、被せ物をしたりする際のほとんどがこの金銀パラジウム合金を使用します。保険ではこれ以上のものがないので、必然的にこの金属が使われることになるのです。
「なぜ歯と同じ色の材料で直せないの?」
と、ここまで読んで疑問に思われるでしょう。実は歯と同じ白い材料で直す方法は幾つかあります。歯と同系色で質の良い材料といえばセラミックです。虫歯を削って形を整えた穴の歯型を採って石膏模型を作成し、歯科技工所でセラミックインレーを作り、次の治療日に出来上がったセラミックインレーをレジンセメントで歯に接着し、穴を埋めます。こうすれば元の歯の形、歯の色に復元することが可能です。セラミックインレーは見た目が良く、硬くて丈夫で汚れが付きにくく、細菌が繁殖しにくいという優れものです。ただし、保険がきかないため高価なのです。従って、高い治療費を出しても上質なものを入れたい方には、セラミックインレーがお勧めです。
しかし、実はインレー以外の治療法もあります。虫歯を削った穴にコンポジット・レジンという樹脂を直接詰めるという方法です。歯科用語で「レジン充填」と呼ばれる方法ですが、この方法にはインレー修復に勝る点があります。虫歯を削った後にできた穴は凸凹しているため、そのままではインレーを作って入れることができず、虫歯でない部分も削り足して穴の形をきれいに整えた後にインレーの型取りをします。
「虫歯を削り取った上に、まだ削らないといけないのか。それは嫌だな」
と感じられた方はレジン充填を検討してください。レジン充填には型取りが要りません。そのため、虫歯を削ってできた穴を直接コンポジット・レジンで埋めてしまえば終わりです。それ以外は一切削る必要がありません。治療回数の面でもインレー修復は最低2回はかかるところ、レジン充填は1回で済みます。虫歯が深い場合にはレジン充填でも2~3回かかる場合もありますが、その場合でもインレー修復よりは1回少なくて済みます。
「こんないい方法があったのか。早く教えて欲しかった」
とお思いでしょう。確かに優れた方法ですが、残念ながらレジン充填にも欠点はあります。レジン充填が理想的な治療報方法であるならインレー修復なんて誰もしないでしょうが、実際には日本中でインレー修復が行われています。つまり、レジン充填にも得意分野と不得意分野があり、レジン充填が難しい場合はインレー修復が選ばれることになるのです。
歯の真ん中にできた虫歯の穴を歯科の専門用語で「1級窩洞」といいます。この場合はレジン充填が対応可能ですから、インレーになることはあまりありません。隣りの歯と接触する部分にできた虫歯の穴は「2級窩洞」といいますが、ここにレジンを詰めたり、詰めたレジンをきれいに磨いたりすることはかなり困難です。隣りの歯との間に隙間ができて物が詰まりやすくなる場合がありますが、そうならないようにレジンをしっかりと詰めるのは難しい作業なのです。そのため、より簡単なインレー修復が選択されます。虫歯以外の部分を余分に削る欠点よりも、歯科技工所で精密に適切な形態で作られたインレーを詰める方が問題が少ないと判断されるわけです。
「2級窩洞のレジン充填が難しいことはわかったが、何とかそれで直してもらえないの?」
と、諦められない方もいらっしゃるでしょう。確かに、2級窩洞をレジン充填で直せないわけではありません。手間と時間がかかるという合理的な理由から、インレーの方を選んでいるだけです。保険診療では、全国一律にレジン充填やインレー修復の治療費が定められています。虫歯の状態や部位によって簡単に治療できる場合もあれば、大変難しい場合もあります。しかし、簡単な治療でも難しい治療でも治療費は同額なので、なるべく簡単に治療できる方法を選択することになり、「2級窩洞に対してはインレー修復」となってしまうのです。
確かに、2級窩洞に対してレジン充填することは手間と時間がかかります。しかし、歯を削る量を少なくできるという点ではインレー修復よりレジン充填の方が優れていることはゆるぎない事実です。治療回数が少なく済むという利点もあります。従って、できるだけ2級窩洞をレジン充填で直すため、保険外の自費治療としてレジン充填を行っています。治療費は高くなりますが、その代わりに手間と時間をかけた上質なレジン充填治療が実現できます。
「歯は必要最小限しか削らない」「可能であれば、歯を削らないで治す」「なるべく神経を抜かない」「なるべく歯を抜かない」という方向性で行う治療を「MI治療」といいます。「MI」とは“Minimal Intervention”の略です。自費治療でレジン充填を行うことにより、余分な負荷のかからない、自然な白い歯の修復が実現します。
治療費 近心、遠心のいずれか1窩洞 18000円+税(19800円)/ 本
近心、遠心の両方 27000円+税(29700円)/ 本
※「近心」は手前の隣の歯に近い部分、「遠心」は奥の隣の歯に近い部分
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咬合面
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隣接面