2012/7/7
相談: (39歳 女性)
2ヶ月程前から口の中の喉近くや下唇裏側などに水疱があり、大きさや数は日によって変わります。熱い物やパンなどの固い物を食べると大きくなるような気がします。痛みはありません。
前日 耳鼻咽喉科に行き、血液検査でウィルスや自己免疫には異常がなかったので、総合病院に回されましたが、そこの耳鼻咽喉科と皮膚科でも分からないと言われました。でも症状は治まっていないのでどうして良いかわかりません。一体 何が原因でしょうか?
回答:口腔内科 樋口均也
口腔粘膜に水疱が繰り返し生じているようですが、水疱ができる病気の代表例はウイルス感染です。ウイルスに感染するとリンパ球がウイルスを攻撃して感染した細胞ごと破壊し、粘膜下に水が溜まって水疱が生じます。血液検査で「ウイルスには異常がなかった」ということですが、一部のウイルスのみを調べた場合は、検査の範囲外のウイルスに感染している可能性を否定できません。
また、水疱ができるもう一つの病気として「天疱瘡」「類天疱瘡」などの自己免疫疾患があります。粘膜の細胞をリンパ球が異物と捉えて抗体(自己抗体)を作ることにより、粘膜の細胞間の接着構造を破壊するため、水が溜って水疱が生じるのです。
自己抗体が大量に作られて血管に入り、全身を巡る段階になれば血液検査でも異常が現れます。一方、血液検査で異常がない場合でも、それは血液中に多量の自己抗体が存在しないことを示しているだけで、粘膜に自己抗体がないことを意味しているわけではありません。
粘膜の状態を調べるには、一部を切り取って調べる病理組織検査が有効で、自己抗体やウイルス感染の有無など、有力な手掛かりを得ることができます。