2013/11/1
相談: (34歳 男性)
お世話になります。1年前の夏に左上6番のむし歯治療をした後から同部位の慢性的な痛みに悩んでいます。半年くらい前からは関連するのか、会話時に左舌が左上6番に擦れる感じもあります。
むし歯治療時に露髄したため、覆髄して仮歯で様子を見ていました。痛みが続くため今年1月にもう一度レントゲンをとってもらいましたが、問題ないとのことでした。今年4月に金歯を被せた後、噛み合わせの違和感が強くなり、研磨などしてもらいましたが改善しません。
不思議なことに食事中は落ち着いており、例えばガムを噛みながら話すと歯の痛みや舌の違和感はあまり気になりません。非歯原性疼痛なのでしょうか?
回答:口腔内科 樋口均也
むし歯治療の際に露髄したということなので、むし歯が歯の神経にまで達していた可能性が高いと思われます。歯の神経にむし歯菌が感染すると歯髄炎が生じ痛みます。その炎症が今も続いているのであれば、慢性的な痛みが持続しているのも当然だと言えます。
いったん歯髄炎が生じても、侵入してきた細菌の数が少なければ、生体が持つ抵抗力で細菌が死滅する場合もあります。その場合は歯髄炎が治まり痛みがなくなります。現在、歯髄炎が持続しているのか、はたまた歯髄炎が消失したのか、文面の情報からは判断することができません。食事中やガムを噛んでいるときに痛まないことを考えると、歯髄炎が治っている可能性も高いと思います。
歯髄炎が治っているとすると、この痛みは非歯原性歯痛ということになります。非歯原性歯痛の原因はいくつもあります。もっとも多いのは歯ぎしりや食いしばりから来る筋・筋膜痛です。この場合は歯の近くにある咬筋や側頭筋が痛んでいることになります。
露髄した際に神経が傷つき神経障害性疼痛が生じている可能性も考えられます。副鼻腔炎や虚血性心疾患、脳腫瘍、 脳梗塞、偏頭痛、群発頭痛で痛んでいる場合もあります。ストレスなどの心理社会的要因で痛む疼痛性障害もあります。いくら調べても原因がわからない場合には特発性疼痛といいます。
2013/11/2
追伸 相談: (34歳 男性)
早速のお返事をありがとうございました。大変参考になりました。痛みを感じる部位のメインは左上6番なのですが、短時間だけ右上6番や上の前歯全体が痛むことがあります。現在は会話時に左上6番が左下6番と当たると痛み、舌も擦れる感じが出て困っています。食べ物を噛みながら喋ると苦痛がないのですが…。
歯科クリニックで話しても不思議がられ、気のせいだと一喝されましたが、半年たってもあまり変わりません。
気になるのは半年前に左上6番に金歯を入れたときに違和感があり、その後の受診でドクターからも「噛み合わせが変わった」と言われたことです。そこで複数歯の噛み合わせを調整され、さらにおかしくなり、自分の口の中ではなくなったように感じました。
無意識に痛みを避けるようにして噛み合わせが変わり、顎の周囲の筋肉が硬直して、このような複雑な症状を呈することはあるのでしょうか??
回答:口腔内科 樋口均也
口の中のいずれかの場所に痛みがあると、それをかばって噛み合わせが変化することがあります。その結果、他の部分にも影響が及び痛みが生じる事があります。
右上や前歯に痛みが生じたのはこのような理由かもしれません。それぞれの部分に別の問題が潜んでいる可能性も考えられます。
いずれの部分の歯にも問題がない場合もあります。全体的に歯肉に炎症がある場合はあちこちが痛みます。歯ぎしりやくいしばりがあれば筋・筋膜痛が生じ、あたかも歯が痛んでいるように感じられます。ストレスなどの心理、社会的要因があればいろいろな場所に痛みが生じます。
2013/11/5
謝辞 相談: (34歳 男性)
樋口先生
ご丁寧なご回答ありがとうございました。大変参考になりました。ご指摘の通り、歯の鈍痛が噛み合わせの違和感を作り出していると思いました。鈍痛が続くので、口腔外科を受診しようと思います。東京からの問い合わせにご丁寧にお答えくださり、ありがとうございました。