顎関節症な主な3つの症状を専門的に表現すると、次のようになります(DeBoever と Carlsson )。
- 顎関節の内部や周囲の疼痛、ならびに咀嚼システム全体の疼痛
- クリッキングやクレピタスなどの関節雑音
- 顎運動の制限や偏位
以下にそれぞれを解説します。
関節痛と筋痛
症状の初期には痛みが見られますが、顎の関節の痛みだけではなく、顎の周囲にも痛みを感じることが特徴です。また、口の開閉や食べ物の咀嚼に関係している筋肉の痛みが加わると、筋緊張性の頭痛や首・肩の凝りが引き起こされる場合もあります。これらの痛みが顎を動かすと襲ってくるのです。
関節痛は顎関節の滑膜、円板後部組織、関節靭帯、関節包の炎症や外傷によって生じます。筋痛は筋筋膜痛ともいい、筋痛が生じる原因として以下が推測されます。
- 筋肉の過剰使用
- 筋肉の虚血
- 交感神経反射による血液供給、筋緊張の変化
- 心理的状態の変化
関節雑音
次に挙げる症状は、顎の関節が発する雑音です。「コリッ」「ポキッ」「カクッ」というような音がクリッキングで、「ザラザラ」「ギシギシ」という小さな音がクレピタスです。クリッキングは、下顎頭が前方にずれた関節円板を乗り越えるときに生じる音です。また、クレピタスは骨と骨同士(下顎頭と下顎窩)が擦れあうときに生じる音です。
このような雑音は、関節円板が前方(ときに側方)にずれることがきっかけで発生します。口を閉じたときには関節円板が前方にずれていて(関節円板前方転位)、口を開けると正常な位置に戻る場合はクリッキング が生じます。口を開けても関節円板が前方にずれたままであれば、雑音は生じませんが、前方にずれた関節円板が開口運動を邪魔し、下顎頭が前方に移動できなくなると開口障害が生じます。これがクローズドロックです。関節円板が前方にずれると、関節円板の後方にある円板後部組織が下顎頭と下顎窩に挟まれて傷つき、穴が開くことがあります。その結果、クレピタスが生じます。円板後部組織が傷つくと、それが原因で痛みが生じることもあります。
顎の運動障害
最後は、顎の動きが悪くなる場合です。上顎は動かないため、顎の動きとは下顎を指し、口が開きにくい、開かない、閉まらない、開閉する際に右か左にずれるといった症状が生じます。口が開きにくいことを開口障害といいますが、痛みを伴う場合と伴わない場合があります。痛みを伴う場合の痛みは関節痛であり、口を無理やり開ければ開きますが、痛くて開ける気にならないような状態です。痛みを伴わない場合はクローズドロックが生じているためで、無理やり開けようとしても開きません。
その他の症状
- 顔面、目、耳、のど、歯、舌、首の痛み
- めまい
- 耳詰まり、耳鳴り
- 舌、頬、唇の粘膜を噛んで歯型が付く
- 顎の疲れ、凝り
- 飲み込みにくい(嚥下困難)
- 手のしびれ