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宿便

腸内に長く溜まっていた便を「宿便」といいます。宿便という言葉は尾台榕堂が1871年に出版した『方伎雑誌』で初めて用いられていますが、1800年前に書かれた『金匱要略』や『傷寒論』に出て来る「宿食」から派生したものと考えられています。

宿便と便秘とは同義語であると解釈されがちですが、異なる部分もあることを指摘する論文があるのでご紹介します。その報告例によると、慢性的に下痢や軟便が続き嘔吐や腹痛を抱えた人が、たまたま住民健診を受けることになりました。硫酸バリウムを造影剤とした上部消化管造影を受けた後も下痢や嘔吐、腹痛が見られたため腹部エックス線写真を撮影してみると、大腸の壁面にバリウムが付着していることが確認できました。そこで、エックス線検査後から桂枝加芍薬大黄湯の内服を開始したところ、翌日には嘔吐と腹痛が消失したのです。再度撮った腹部エックス線写真では、大腸壁面のバリウムは消失していました。

この症例では下痢便の排泄が続いており、決して便秘ではありません。腸管の中央部分を便が通過していて便の排泄があったとしても、腸管壁に便などがヘドロ状に付着している状態があり、これも宿便と考えられます。

腸内細菌と免疫力には密接な関係があります。腸内細菌叢がよい状態に保たれていることは健康を維持するために必要不可欠であり、宿便によって腸管免疫が乱されると体調の悪化やさまざまな病気を招くことにもなりかねません。

寺澤捷年, 土佐寛順, 平崎能郎:宿便についての一考察.日本東洋医学雑誌 65(4), 309-312, 2014 

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