2015/4/26
相談: (40代 女性)
17歳男の息子のことです。4月18日にレントゲンを撮ったところ、右下7番の下に黒い透過画像がありました。6番目にも少しかかっています。生活歯です。写真上は縦横2センチくらいで丸く、歯根吸収はないように見えます。親不知はありません。歯科用CTを撮ったところ、7番と6番の歯根にかかるように、もこもこした塊が見えました。神経を包みこんでいるとのことでした。
単純性嚢胞だと思うがエナメル上皮腫の可能性もある、と言われました。5ヶ月前にもレントゲンを撮ったのですがその時は何もなかったです。先生も、半年で?みたいな感じでした。その後口腔外科を紹介受診し、造影剤の検査結果待ちです。
半年もしないうちにこここまで成長する嚢胞、腫瘍はあるんでしょうか?嚢胞か腫瘍か心配でなりません。また、手術をすると、骨を削る必要があるのか、麻痺などはどの程度なのか、抜歯は必要なのか。早く知りたいので相談させていただきました。
回答:口腔内科 樋口均也
画像で下顎骨の下半分に直径2㎝の空洞がある場合は、のう胞か良性腫瘍の可能性が高いでしょう。
単純性骨嚢胞は外傷性骨嚢胞ともいい、打撲による出血で骨に空洞が生じるとされています。5ケ月前以降に発生したことを考えると、まずこの嚢胞が疑われます。
治療方法は手術となり、のう胞がある部分の粘膜を切開して表面の骨を削り、顎骨内部ののう胞腔の内容物を掻爬して骨面から出血させた後、傷を縫合します。内部に溜まった血液がやがて骨となって治癒するため、抜歯する必要はなく、下歯槽神経の損傷により麻痺が生じる可能性も少ないでしょう。
エナメル上皮腫は良性腫瘍ですが再発しやすく、治療に注意を要する病気です。隣接する歯も一緒に抜歯する場合があり、特に腫瘍が大きい場合は腫瘍がある部分の下顎骨を切り取ってしまう(区域切除)こともあります。
しかしながら、腫瘍が直径2cmと比較的小さく年齢が17歳と若いことを考慮し、大掛かりな手術は避けると推察します。腫瘍を取らない開窓療法や下歯槽神経に隣接する腫瘍は残し、一部を摘出して開窓する治療法を選択するのではないでしょうか。順調に回復すれば腫瘍は小さくなっていくため、術後は定期的にエックス線検査を行い、縮小した腫瘍を摘出することになります。ただし経過観察中に再発が認められれば再手術が必要で、万一腫瘍が大きくなる場合は、区別切除などの手術が必要となります。
また、手術の際の病理組織検査が悪性であればさらに広範囲の手術が必要となり、放射線照射や抗がん剤による化学療法を併用する場合もあります。
2015/5/10
追伸 相談: (40代 女性)
先日相談させていただきました17歳の息子の顎骨嚢胞のことです。造影剤検査で単純性顎骨嚢胞との診断を受け、全身麻酔で摘出手術する予定です。右下7番目の顎骨あたりです。2センチくらいと思われます。主治医は夏休みでもいいよと言ってくれていますが、心配です。
7番目の歯が駄目になるかも、と言われているので、一月伸ばしたことで歯が駄目になる可能性が高くなるのではないかと心配です。半年前に撮ったレントゲンでは何も写らなかったのに半年で2センチの嚢胞ができるというのは息子の嚢胞は発育が早いのではないかと思ってしまいます。主治医は、レントゲンだと大きくならないと写らないことがあるから、と言います。学校のことを考えれば夏休みにしてもらえれぼ有難いですが、2ヶ月先延ばしにしたことでリスクが増えるのは嫌です。発育が早い嚢胞は本当にないのでしょうか?
あと、左下に水平埋伏智歯があるので、一緒に摘出してもらおうと思っていますが、大丈夫でしょうか?日にちを変えた方がいいですか?
回答:口腔内科 樋口均也
前回もお答えした通り、単純性骨嚢胞に隣接する歯を抜かなくてはならないということはありません。嚢胞の圧迫によって骨が溶ける場合など、その歯の状態が悪ければ抜歯が必要となる場合もあるというだけです。
5ヶ月以内に急に出現した嚢胞が今後そのまま大きくなっていくことを心配されていますが、その可能性は低いでしょう。外傷による出血などで単純性骨嚢が突然出現することがあっても、その後はほとんど変化しないと考えます。
とはいえ、手術を先延ばしすることで多少は大きくなる可能性があるため、ご心配であれば早期に手術を受けられることをお勧めします。また手術の際、左下の親知らずを抜くことは可能です。