西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱とは、病状が進行すると全身から出血が生じ、死に至る確率が高い病気です。このような性質の病気にはマールブルグ出血熱、ラッサ熱、デング出血熱、黄熱病などがあり、死亡率が高い急性の伝染病を中医学では「温病」といいます。
中医学の歴史において、伝染病の病態や治療法は3世紀初めの『傷寒論』により確立されました。傷寒という病気は感冒やインフルエンザを指すと考えられますが、出血熱のような病気は傷寒論の理論に当てはまらない部分が多いため、別の病気として捉えた方がよいのです。
このような病気を説明する理論として、17世紀に温病学が確立されました。傷寒論の理論では風邪や寒邪が表から侵入して裏に回る一方、温病学では熱邪や温邪、湿邪が衛分から入り、気分、営分、血分へと進むとされます。温病は主に中国南部や熱帯といった暑い地方に発生し、SARS(重症急性呼吸器症候)やインフルエンザ、新型インフルエンザも温病の仲間となります。