中国では想像上の動物である玄武、白虎、青竜、朱雀を四神と呼び、これらの名の付いた漢方薬が存在します。即ち含まれる生薬の色が黒、白、青、赤(朱色)である玄武湯、白虎湯、小青竜湯、朱雀湯がそれに該当します。
玄武に因んだ玄武湯は、構成生薬の一つである附子が黒いことから命名されました。附子が入っているため冷えに効果的で、脾胃の陽虚に対する方剤です。宋の時代に皇帝の名(趙玄朗)と重複したことから、真武湯という名に改められています。
白虎に因んだ白虎湯は、構成生薬の一つである石膏が白いことから命名されました。白虎湯は石膏の働きによって胃熱を取りますが、脾胃の働きを助ける人参を加えた白狐加人参湯の方がよく用いられています。
青竜に因んだ小青竜湯は、構成生薬の一つである麻黄が青いことから命名されました。元来麻黄の花は黄緑色ですが、採取後に陰干しすると青くなります。小青龍湯は外寒内飲の証、即ち風邪を引いて寒気がし、水洟や咳が出る時期に用いられます。麻黄と桂枝の働きで発汗させて熱を取り、乾姜、細辛、五味子、半夏が利水して鼻水を止めるのです。
朱雀に因んだ朱雀湯は、構成生薬の一つである大棗が赤いことから命名されました。大棗はナツメの実を乾燥させたもので緑色をしていますが、熟すと赤くなってリンゴに似た味がします。現在朱雀湯は使用されておらず、その実態は謎に包まれていますが、十棗湯と似た方剤という説が有力です。
ところで中国の五行論では黒、白、青、赤の他に黄があり、黒、白、青、赤は東西南北を表し、黄は中央を指します。その黄に因むものが黄竜湯で、柴胡の花の黄色から命名されました。黄竜湯とは小柴胡湯の別名であり、少陽病に用いる方剤です。