動植物や鉱物から集めた生薬を幾つもブレンドすることにより、漢方薬が出来上がります。このようにブレンドされた漢方薬を「生薬」といいます。さまざまな効果を持つ生薬を多数加えた漢方薬は、いかにもよく効くというイメージがありますが、実はそうではありません。生薬の数が多くなると漢方薬の効果はマイルドになり、逆に生薬の数が少ないほどシャープになるのです。
芍薬甘草湯という漢方薬を例に挙げてみましょう。この方剤は芍薬と甘草という二つの生薬のみで構成されていますが、こむら返りが生じた際にこの薬を服用するとたちどころに治ります。一般的に漢方薬はゆっくり効くというイメージがありますが、芍薬甘草湯のような即効薬も少なくありません。
漢方薬には甘草や人参、生姜、芍薬など、胃薬としての効果を持つものがたくさんあります。中医学の世界では胃腸の調子を整えることが病気を治すことにつながる、という考えが治療方針の根本だからです。
また、漢方薬には桂皮、柴胡、大棗、茯苓、甘草、人参など精神を安定させる働きを持つ生薬が含まれています。言 うまでもなく体の不調は心理面の不調につながるため、漢方薬にはこうした面への配慮もなされているのです。