舌がんの症状とはどのようなものでしょうか。舌がんとひと口に言っても扁平上皮癌、腺様嚢胞癌、乳頭上腺癌、横紋筋肉腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫など様々な種類があり、それぞれで症状が異なります。ここでは最も多く見られる扁平上皮癌の特徴について説明しましょう。
舌扁平上皮癌の見た目の変化は、主に4パターンあります。粘膜が白くなる、赤くなる、膨れ上がってできものができる、潰瘍ができる、の4つです。いずれの場合も、形が不規則で境界が不明瞭なものほどがんである可能性が高くなります。痛みを伴う場合も多く、病変部が大きくなるにつれて痛みが生じやすいという傾向があります。ただし、大きな病変でも痛くない場合もあります。
Gorskyらの論文「舌癌:臨床所見、危険因子、進行度、治療結果の症例集積研究」では、舌癌に関連する次のような症状を挙げています。この論文では、普段見えている舌前方2/3(314人)と直接見ることができない舌後方1/3(126人)に分けて記載されていますが、ここでは舌前方2/3を取り上げてみましょう。
- 舌痛 197人
- 舌腫瘤 78人
- 嚥下障害 57人
- 首の腫瘤塊 48人
- 耳痛 42人
- 声の変化 11人
- 出血 4人
Gorsky, M., Epstein, J. B., Oakley, C., Le, N. D., Hay, J., & Stevenson-Moore, P. (2004). Carcinoma of the tongue: a case series analysis of clinical presentation, risk factors, staging, and outcome. Oral surgery, oral medicine, oral pathology, oral radiology, and endodontology, 98(5), 546-552.
一方、Josephの論文「口腔がん:予防と発見」には初期口腔がんの特徴が次のように記載されています。
- 症状に乏しい
- 白板
- 外側に増殖する
- 潰瘍や発赤は生じにくい
- 治療しても2週間以上治らない潰瘍はがんが疑われる
- 必ずしも痛みがあるわけではない
- 初期口腔がんを疑う症状は硬結、肉芽上増殖、深部組織との癒着、抜歯窩や他の傷が治らない、明らかな原因が見当たらない歯の動揺、原因不明の嚥下障害である
- 初期口腔がんでもリンパ節転移することがあるが、反応性のリンパ節腫大の場合もあるため、リンパ節が大きくなっていてもリンパ節転移とは限らない
また、同じ論文に前がん病変について次のように記載されています。
- 最も一般的な前がん病変は口腔粘膜の白色病変と紅色病変である
- 前がん病変は必ずしもがんになる前の過程とは言えないが、がんになる可能性がある
- 白色病変(白板症)はもっとも一般的な前がん病変であるが、紅色病変(紅板症)や白色病変に赤色部が混じった病変の方が危険である
Joseph, B.K. (2002). Oral cancer: prevention and detection. Medical Principles and Practice, 11(Suppl. 1), 32-35
Scullyらの論文「口腔がん:現在と将来の診断法」には、口腔がんの危険性がある特徴として次のように記載されています。
- 紅色病変(紅板症)
- 赤白混合病変や不規則な白色病変
- 腫瘤
- 亀裂型の潰瘍や辺縁部が盛り上がった潰瘍
- 痛みやしびれ
- 腫瘤から出てくる異常血管
- ぐらついて(ばらついた)歯
- 治らない抜歯窩
- 病変下の硬結(粘膜下の硬い浸潤)
- 病変と深部組織、皮膚、粘膜との癒着
- リンパ節腫大
- 嚥下障害
- 体重減少
Scully, C., Bagan, J. V., Hopper, C., & Epstein, J. B. (2008). Oral cancer: current and future diagnostic techniques. Am J Dent, 21(4), 199-209