舌が痛い、舌がピリピリする、舌や口蓋の粘膜が焼けるように熱いなど舌痛症の症状を訴える患者さんのお話を聞いてみると、他にも共通した症が現れていることがわかります。
1.筋・筋膜性疼痛
舌が痛む場合は顔面や首、肩に筋・筋膜性疼痛が生じている場合がよくあります。歯には何も異常がないのに、筋・筋膜性疼痛が原因で歯に痛みを感じる場合もあります。このような症状を筋・筋膜性歯痛といい、歯ぎしりや食いしばりが関係していることが少なくありません。筋・筋膜性疼痛が舌の痛みの直接的な原因になることもあります。また、慢性的な舌の痛みのために首や肩の筋肉が凝り固まることにより、筋・筋膜性疼痛が生じる場合もあります。
2.口腔灼熱症候群
口の中が焼けるように痛くなる病気を「口腔灼熱症候群」といいます。この症状は舌に出やすく、症状が舌に限局する場合もあります。舌痛症と口腔灼熱症候群は症状が似通っている部分があるため、同じ病気であると考えても支障はありません。
3.味覚障害
味が感じにくい、変な味がするというような味覚の異常が舌痛症の患者さんに見られる場合があります。味が感じにくくなることを「味覚減退」、味を感じなくなることを「無味覚」といい、亜鉛欠乏症や薬の副作用、ドライマウス、ウイルス感染などでよって生じます。他に何も口に入っていないのに味がする「自発性異常味覚」、甘いものを苦いなどと感じる「錯味症」、嫌な味を感じる「悪味症」などがありますが、これらは味覚を感じる神経が病的に興奮した状態であることが原因と考えられています。その点において、本来は舌に痛みの原因がないにもかかわらず、痛覚を伝える神経が病的に興奮した状態で痛みを脳に伝える舌痛症と共通の要因が潜んでいることが疑われます。
4.ドライマウス
何らかの理由により、唾液の分泌量が低下して舌の粘膜が乾燥すると粘膜が荒れて痛みが発生します。このことから、ドライマウスは粘膜に異常が見られるタイプの舌痛症の原因となります。一方、唾液の分泌量が低下していないにもかかわらず口の中が乾いたり、ネバネバしたりするタイプのドライマウスもあります。このタイプは、舌の知覚や温度覚を伝える神経が脳に間違った情報を伝えることにより生じたものと考えられています。このような神経の異常は舌痛症と共通するものです。
5.咽喉頭異常感症
のどが詰まる感じやのどに何かが引っかかっている感じ、のどがイガイガする感じなどの違和感が生じる病気を「咽喉頭異常感症」といいます。
このような症状はのどのがんや良性腫瘍、細菌感染、アレルギー、乾燥などにより生じますが、いくら調べても何も異常が見当たらない場合もあります。その場合は、のどの知覚を伝える神経の異常によって脳に誤った信号が伝わっていると考えられます。このような神経の異常は舌痛症と共通するものです。