疝気とは下腹部の痛みを指し、陰嚢痛や外陰部痛のことをいいます。慢性陰嚢痛(もしくは精巣痛)とは「両側もしくは片側の精巣の痛みが3か月以上にわたって、連続的もしくは間欠的に続く状態」と定義されています。米国では泌尿器科を受診する患者の2.5%が陰嚢痛を訴え、その半分が原因不明のため治療法がないとされています。西洋医学では、陰嚢痛に対して顕微鏡下精索静除神経術が行われる場合があります。
日本漢方の理論によると、肝の支配する経絡に寒邪が侵入する寒滞肝脈により陰嚢痛が生じることがあり、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いて治します。
中医学では疝気を厥疝、寒疝、癲疝(陰嚢ヘルニアや睾丸炎)、気疝、盤疝、腑疝、孤疝(鼠径ヘルニア)の七疝に分けています。疝気の病因は寒受寒湿、肝気鬱結、脾虚気陥のいずれかとなり、寒湿凝滞によって寒疝か水疝が生じます。寒疝に対しては暖肝煎、水疝に対しては五苓散加味で治します。肝鬱気滞に対しては天台烏薬散加味、脾虚気陥に対しては補中益気湯で治します。