皮膚に発生した水疱が何らかの刺激により破れ、糜爛となって痛む水疱性疾患の一つに類天疱瘡(pemphigoid)があります。関節リウマチなどと同じ自己免疫疾患に分類され、表皮基底膜部のタンパク質を自分のリンパ球が攻撃することで組織が破壊されて水疱が生じます。類天疱瘡は、粘膜類天疱瘡と水疱性天疱瘡に細分されます。
粘膜類天疱瘡は主に口腔粘膜(歯肉、口蓋粘膜)に症状が生じ、眼、鼻腔、肛門、咽頭、咬頭、食道に水疱やびらんが生じる場合があります。皮膚と口腔粘膜に症状が現れる場合が多く、口腔粘膜だけの場合もあります。皮膚の症状には瘙痒性紅斑、緊慢性水疱、びらんがあります。粘膜類天疱瘡の標的タンパク質はBP180、BP230、ラミニン332、Ⅳ型コラーゲン、α6β4インテグリンです。
水疱性天疱瘡は皮膚に瘙痒性紅斑、緊慢性水疱、びらんを形成します。口腔粘膜に病変が生じるのは1~2割で、粘膜類天疱瘡と同様に歯肉や口蓋粘膜に病変が生じ、口腔粘膜以外の粘膜に症状が現れることはまれです。粘膜類天疱瘡とは異なり高齢者に生じることが多く、標的タンパク質はBP180、BP230です。
類天疱瘡の検査には血液検査と病理組織検査があります。血液検査にはBP180、BP230、Ⅳ型コラーゲン(いずれもELISA法)があり、これらの結果を組み合わせて判定することにより診断精度が向上しますが、保険が適用されるのはBP180のみです。標的抗原を最終決定する方法として精製ラミニンを用いた免疫ブロット法があり、免疫グロブリンや補体を調べます。ただし、この方法は特定の病院でのみ行われています。
類天疱瘡の治療はステロイドの内服あるいは外用が中心となります。症状が重い場合や多臓器に症状がある場合には、ステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量静注療法が必要です。症状が軽い場合や限局している場合はステロイドの外用となり、ジアフェニルスルホン、ニコチン酸アミド、ミノサイクリンを併用する場合もあります。
類天疱瘡の発症には悪性腫瘍の発症が伴いやすいとされています。類天疱瘡の治療と並行して悪性腫瘍のスクリーニングが必要となります。