鎮痛剤
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、炎症を抑えることにより痛みを軽減します。NSAIDsが働くのはアラキドン酸がシクロオキシゲナーゼに結合し、発痛物質であるプロスタグランジンEが産生される部分です。シクロオキシゲナーゼの働きを抑えてプロスタグランジンEの産生を抑制することで、最終的にはNaイオンがニューロン内に流入し、結果として活動電位の発生を抑えて鎮痛効果を発揮します。
シクロオキシゲナーゼ
細胞内の小胞体や拡散に結合して存在するシクロオキシゲナーゼの内部にアラキドン酸が入り込み、酵素活性部位に結合します。その結果、プロスタグランジンEが産生されて痛みが伝わります。シクロオキシゲナーゼには1型(COX-1)と2型(COX-2)があり、COX-1は腎臓や胃粘膜を保護するプロスタグランジンEを常時産生する一方、COX-2は炎症時にプロスタグランジンEを産生し、痛みにつながります。
アスピリン
1899年にドイツのバイエル社がアスピリン(薬剤名:アセチルサリチル酸)を発売しました。アスピリンは世界で初めて人工合成された医薬品で、鎮痛剤の代名詞として世界中で使用されてきました。
アスピリンはCOX-1、COX-2内部のそれぞれの活性中心に結合し、一度結合すれば再び離れることがない「非可逆的」な鎮痛剤です。アスピリンが結合しているとアラキドン酸が活性中心に結合できなくなり、プロスタグランジンEが産生されなくなるため、痛みの発生が非可逆的に抑えられます。
ポンタール
アスピリンはシクロオキシゲナーゼ(COX)の活性中心に非可逆的に結合しますが、ポンタール(薬品名:メフェナム酸)は可逆的に結合します。そのため、多量のアラキドン酸がCOXの中に入ってくるとポンタールとの競合に勝利し、アラキドン酸によるプロスタグランジンE産生が進みます。
ボルタレン
シクロオキシゲナーゼ(COX)内部のアルギニンにボルタレン(薬剤名:ジクロフェナック)が結合し、架橋構造を形成します。このバリアによってアラキドン酸がCOXの活性中心に近づけなくなり、プロスタグランジンEの産生が抑えられます
セレコックス
COX-2選択的阻害剤であるセレコックス(薬剤名:セレコキシブ)は、NSAIDsが持つ腎障害や胃腸障害が生じにくい鎮痛剤です。シクロオキシゲナーゼには1型(COX-1)と2型(COX-2)があり、COX-2と比べるとCOX-1は入り口が狭くセレコックスが中に入れないため、COX-1が腎臓や胃粘膜を保護するためにアラキドン酸によるプロスタグランジンEの産生を妨ぐことができません。一方入り口が大きいCOX-2の中には入ることができ、炎症時にアラキドン酸がプロスタグランジンEの産生をブロックし、痛みの発生を抑えてくれるのです。