医者兼僧侶

モンゴル伝統医学の若手の医者は診察室で脈と舌を診た後、漢方薬のような薬を処方してくれました。また、処置室では外科処置を行い、指圧と整体、お灸を施してくれました。きっと地方に行けば子どもや精神病の患者、お産まで担当するのでしょう。もしかしたら、歯の治療や家畜の体調管理まで請け負っているのかもしれません。
以前、NHKの衛星放送でチベット伝統医学の医者を取り上げたドキュメンタリーを見たのですが、夏になると自分で薬草を採取し、秋から冬にかけては製薬を行っていました。このように、一人の医者が全ての診療科を担当し、そのうえ鍼灸師や薬剤師、獣医まで兼務するのは洋の東西を問わず、時空を超えた本来の姿であるといえるでしょう。その意味では、今回のモンゴル訪問により医者という仕事の原点を顧みることができました。モンゴルの医師との出会いは私にとって大変感慨深い、貴重な体験となっています。
治療を受けた場所がお寺であったこと。これも決して偶然の成り行きではなく、少し前までは僧侶が医者として診療に従事していたのです。おそらく今でも、地方では僧侶が病人を診ているでしょう。モンゴルの遊牧民が文字を使い始めるまでの長い間、僧侶は唯一の知識人であり、 学者でもありました。すなわち、僧侶が医者も教育者も占い師も芸術家も兼ねていたのです。よく知られているところでは、かつて同じユーラシア大陸の西の果てで活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチがその代表例でしょう。


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