『アルテミオ・クルスの死』

読書・趣味・家庭 2022年06月07日

『ジョニーは戦場に行った』と同じように、ベッドに寝たきりで口もきけない人の話ですが、こちらは死の間際の大富豪である老人のお話です。メキシコ革命、スペイン内戦の記憶が語られ、宇宙や細胞、メキシコの工芸、新聞社の内幕など、多彩な話題が提供されます。

主人公に対しては「わし」「お前」「彼」と異なる人称が用いられ、語り手が3人いるのですが、3人とも主人公です。主人公が死にゆく際に3人は1人の人間として一緒に死んでいきます。「彼」として語られる主人公の過去は波乱万丈で、その行動に不審な点が多々あります。人称が異なって語られるように、人格が乖離していたのでしょうか。