生えてきて間もない永久歯の根管治療

虫歯が歯の神経(歯髄)に達していて、なおかつ歯髄の炎症症状が強い場合には神経を温存する治療法である「直接覆髄」では対応できず、神経を抜く、すなわち「抜髄」せざるを得なくなります。その場合はきっちりと根管治療を行い、神経が入っていた管(根管)を詰めて治療(根

 

管充填)します。しかしながら、生えてきて間もない永久歯(幼若永久歯)の場合は難しい点があります。

  1. 幼若永久歯の問題点
  2. 断髄(アペキソゲネーシス)
  3. アペキシフィケーション
  4. リバスクラリゼーション
  5. リバスクラリゼーションの手順

幼若永久歯の問題点

乳歯が生えそろっている時期に、永久歯は顎骨の内部で何年もかけて徐々に形作られていきます。永久歯ができてくると、乳歯が動揺し始め、やがて抜けてしまいます。乳歯が抜けた後には永久歯が生えてきます。ただし、生えてきた永久歯の歯冠は完成していても、歯根は未完成なのです。どのように未完成かというと、歯根が短く、根管が広く、根管を取り囲む歯質が薄く、歯の根の先(根尖孔)が開いているという状態です。完成した歯根の形態と見比べるとその違いがよくわかります。

 幼若永久歯成熟永久歯

このように歯根が未完成の歯は、歯根の長さを測定するのが難しく、正確に根管治療するのが難しいのです。根尖孔が開いているため、根管充填も困難です。歯質が薄いため、歯が弱く、噛む力が加わると破折する恐れもあります。

断髄(アペキソゲネーシス)

幼若永久歯が抱える問題点を説明しましたが、逆に幼若永久歯が持つ長所もあります。根尖部が未完成で根尖孔が開いているため、歯髄への血液供給に富み、歯髄の回復力が旺盛なことです。そのため、虫歯が歯髄にまで進行していて成熟永久歯であれば抜髄が必要な状況であっても、幼若永久歯の場合は抜髄しなくてもすむことがあるのです。それが「断髄」といって、虫歯に近接していて細菌感染により死んでいる歯髄(壊死した歯髄)のみを部分的に除去する方法です。

生活歯髄

断髄では歯冠部の歯髄するのが一般的です。壊死している範囲が狭い場合には、歯冠部の歯髄の一部のみを除去するスペック断髄(部分断髄)でよい場合もあります。部分断髄に対して、根管口部で断髄する一般的な断髄法を全部断髄といいます。が成功すれば、残った部分の歯は正常な状態に回復し、歯根が成長して根尖孔小さくなります。また、した部分の歯の表面は「デンティンブリッジ」という硬い組織に変化し、内部の歯が保護されるようになります。この治療法を「アペキソゲネーシス」といいます。同時に根管が狭くなり、根管を取り囲む歯質が厚くなります。

アペキシフィケーション

歯髄炎が歯髄全体に拡がっている場合には、断髄では治らず、抜髄する必要があります。成熟永久歯であれば根管治療後に根管充填を行いますが、幼若永久歯の場合にはすぐに根管充填できるわけではありません。根尖孔が広がっているため、根管充填剤を詰めようとしても根管の外に漏れ出してしまうので、緊密には詰められないのです。そのため、根尖孔付近に水酸化カルシウム製剤を詰めて根尖部が狭くなるまで待ちます。水酸化カルシウム製剤が根尖付近の歯根膜や骨組織を刺激し、その結果硬組織が新たにできて根尖部が狭くなるのです。この治療法を「アペキシフィケーション」といいます。3か月から2年ほどして根尖部が狭くなると、ようやく根管充填が行えるようになります。しかし、根管が広く、根管を取り囲む歯質が薄くて噛む力に耐えられなくなる可能性があるという問題は解決しません。

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リバスクラリゼーション

抜髄後に水酸化カルシウム製剤を詰めて様子を見ていると、根尖部の軟組織が根管内に進入してきて根管がこの肉芽組織で埋まることがあります。このような場合は根管充填せずに根管治療を終了し、根管治療をするためにあけた歯冠部の穴(窩洞)をレジンで封鎖します。治療後、歯根が伸びて根尖孔が狭くなり、歯根が完成します。また、根管が狭くなり、根管を取り囲む歯質が厚くなります。根尖部の軟組織が根管内に伸びてこない場合には根尖部をつついてわざと出血させ、根管内が血液で埋まるようにします。

硬組織形成

根管内の肉芽組織や血液塊(血餅)がこのような反応を引き起こすと考えられていて、この治療法を「リバスクラリゼーション」といいます。リバスクラリゼーションとは血管再生を意味し、神経と血管の複合体である歯髄が除去された根管内に新たに血管が構築されるという概念です。血管再生に引き続いて歯根の完成がもたらされると考えられています。

リバスクラリゼーションはアペキシフィケーションと比べて利点が多い治療法です。しかし、どのような場合でもリバスクラリゼーションが成功するとは限りません。根管内に肉芽組織が伸びてこず、根尖部から出血させても血管再生が起きない場合があります。このような場合には根尖孔が狭くなるのを待って根管充填するアペキシフィケーションに切り替えることになります。

リバスクラリゼーションの手順

1回目                            治療費 33,000円

  1. 局所麻酔の後、ラバーダムを装着
  2. 歯冠部に穴(窩洞)をあけた後、歯髄を除去
  3. エックス線写真を撮影し、作業長を決定
  4. 根管洗浄
  5. 根管内をペーパーポイントで乾燥
  6. 根管内に水酸化カルシウムを貼薬
  7. 仮封

2回目(初回治療から1~4週間後)               治療費 22,000円

  1. 症状の有無を確認する。症状がある場合は1回目の治療を繰り返す。症状がない場合は以下の治療に進む。
  2. 局所麻酔の後、ラバーダムを装着
  3. 根管洗浄
  4. 根管内をペーパーポイントで乾燥
  5. 肉芽組織がない場合は根尖孔をつついて出血させ、根管内が血餅で埋まるようにする。
  6. 血餅の上に吸収性マトリックスを置き、MTAを充填
  7. MTAの上にグラスアイオノマーセメントを詰め、窩洞をレジンで充填