『人間の絆』2
幸せとは何か、人生の意味とは何か、について考えさせる本です。月並みですが、わが子が誕生した際に、自分がなんのために生きてきたのかを実感できました。
「これまでのぼくは、他人が言った言葉、書いた文章に教えられた理想を追い求めてきたのであって、自分自身の心底からの願望をないがしろにしてきた。こうも言えよう。こうすべきだと考えたことに支配されたのであって、自分が心の底からぜひ成し遂げたいと願ったことは、せずじまいだった。自分の真実の欲求以外のものを、今やもう不要と言わんばかりに、すべて頭から払拭した。これまでは常に未来にばかり生きてきて、現在は指の間からこぼれてしまっていた。自分の理想は一体どういうものだろうか? 自分の無数の無意味な事実を材料にして、複雑で美しい意匠を紡ぎだしたいという願望を思い出した。だが、人が生まれ、働き、結婚し、子供を作り、死ぬという、もっとも単純な意匠であれ、他のものと遜色なく、もっとも完璧な意匠だと言ってもよいのではなかろうか?」