『戦争ごっこ』
済州島の富農の家に育った小学生が太平洋戦争末期から朝鮮戦争の間に経験した困難や苦悩を描いた物語です。この二つの戦争の間に済州島では共産主義者のパルチザンが島中央部にあるハルラ山に立てこもってふもとの集落を襲う「四・三事件」が生じました。主人公はこの混乱の中で父親を殺され、自身も身を隠した牛小屋ごと焼き殺されそうになります。この物語では触れていませんが、実際には韓国の警察や軍が強権的に共産主義者を取り締まり、殺害したことから騒動が拡大したようです。
特に意識しなくても韓国の現代史はさまざまなソースから自然に知識を得ますが、そこに暮らす人々の生の姿は知る機会が少なく、興味深く読めました。初めて知ることもありましたが、多くの疑問が沸き起こっても来ました。
なぜ済州島でだけ共産主義者が力を持てたのか。韓国本土ではどうだったのか。
ソ連軍が管轄する38度線以北では逆に自由主義者が抵抗活動、武装闘争を行わなかったのか。