『未成年』
ドストエフスキーの小説を読むと故郷に帰ったような懐かしい気持ちになります。この小説も筋が複雑で多くのドラマが詰め込まれていて、個々のドラマは断片的にしか描かれていません。バルザックやゾラなら連作にするのでしょうが、ドストエフスキーは読者に想像する楽しみを与えてくれているのでしょう。
主人公は二十歳前?のアルカージー・マカーロヴィチ・ドルゴルーキーです。ロシア人の名前は長いのですが、父親の名前がわかるという利点があります。名義上の父親はマカール・イワーノヴィッチ・ドルゴルーキーで、農奴から自由の身になった信心深い巡礼者です。マカールの語るマクシム・イワーノヴィッチの挿話は、『カラマーゾフの兄弟』の中の『大審問官』の挿話を思い出させます。
終盤のドタバタ劇はチャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』のような緊迫感がありますが、どちらの小説も現代のハリウッド映画のような上手な仕上がりにはなりません。物語の技法は時代とともに進歩しているということなのでしょう。
アルカージーは教養があって美しい青年で、ロスチャイルドのような大富豪になれると考えています。スタンダールの『赤と黒』のジュリアン・ソレルを思い出します。
アルカージーの実の父はアンドレイ・ペトローヴィチ・ヴェルシーロフです。この父は没落した貴族で高度の知識人であり、理想主義者でが、家族を捨て置く非情の人でもあります。この実父は切羽詰まると「分身」が現れてとんでもない行動に出るのですが、「専門的な医学書によると、~深刻な精神変調の初期の段階」と書かれています。1875年に出版された小説なので、フロイトより前の精神医学書でしょう。現在では何と診断されるのでしょうか。
アルカージーは教養があって美しい青年で、ロスチャイルドのような大富豪になれると考えています。スタンダールの『赤と黒』のジュリアン・ソレルを思い出します。
アルカージーの実の父はアンドレイ・ペトローヴィチ・ヴェルシーロフです。この父は没落した貴族で高度の知識人であり、理想主義者でが、家族を捨て置く非情の人でもあります。この実父は切羽詰まると「分身」が現れてとんでもない行動に出るのですが、「専門的な医学書によると、~深刻な精神変調の初期の段階」と書かれています。1875年に出版された小説なので、フロイトより前の精神医学書でしょう。現在では何と診断されるのでしょうか。