『権力と栄光」
『権力と栄光」
1930年代のメキシコ革命の時代はカトリックが徹底的に弾圧されました。教会は破壊され、神父や信者は反逆罪で多数が処刑されました。そのような状況の中で主人公の「ウイスキー坊主」は警察の目をかいくぐって何年も潜伏生活を続けます。
最後はこの主人公もつかまって即日裁判の上で処刑されてしまうのですが、殉教者としては描かれません。酒におぼれ、姦淫の罪を犯して隠し子を設けたウイスキー坊主は神からも警察からも逃げようとします。
小説の舞台はタバスコ州ですが、州内には主人公以外にもう一人ホセ神父が生き残っています。彼は踏み絵を踏んで年上の家政婦との結婚を受け入れることによ り助命されます。遠藤周作の『沈黙』の主人句であるロドリゴを彷彿とさせる人物ですが、それもそのはずで遠藤周作はこの人物をモチーフにして『沈黙』を書いたようです。