ウクライナ東部のロシア人

時事問題 2025年06月27日

ウクライナの政治状況が緊迫しています。東部やクリミヤ半島にはロシア人が多く住んでいるために帰属問題も生じています。ウクライナ人、コサック、タタール人、ロシア人達のこの地をめぐる確執は根が深いようです。モンゴルやトルコ、イギリス、ドイツの軍事介入の歴史が話を複雑にしています。

『静かなドン』はウクライナ東部を流れるドン川流域のコサック、即ちドン・コサックの物語です。アゾフ海やクリミヤ半島での白軍と赤軍、イギリス軍が入り乱れて戦う様子も生々しく描かれています。

この小説の世界では、ドン・コサックはロシア皇帝に対する忠誠心や逆に独立心を抱いていたようです。居住地域からするとウクライナなのですが、この長い小説の中でウクライナという地域やウクライナ人、ウクライナ語といった用語はほとんど出てきません。主人公のグリゴーリー・メレホフが身分の誰何の際に担当者から「ウクライナ人」とされた記述がたった1か所あるだけです。

ウクライナの話とは離れますが、ロシア帝国の徴兵制は過酷なものだったようです。徴兵期間は25年!もあり、兵役を終えて村に戻った初老の元軍人が結婚する話も出てきます。軍隊から逃亡するものも多く、捕まると懲罰部隊に入れられます。ドストエフスキーの『死の家の記録』によれば、ここは通常の監獄と比べて格段に厳しいところであったようです。