ネイティブ・サン

読書・趣味・家庭 2023年10月07日

1940年頃のシカゴを舞台にしたリチャード・ライトの小説で、「アメリカの息子」の副題が付いています。二十歳の黒人男性が白人富豪宅の住み込み運転手の職をその富豪から与えられ、その日の深夜に富豪の一人娘を殺してしまい、誘拐を装って噓がばれ、逃走の挙句につかまえられます。逃走中には口封じのために身近な人間をもう一人殺してしまいます。

このように非常で卑劣な殺人犯に感情移入することはできませんが、このような立場に追いやった当時の米国における黒人差別のすさまじさをまざまざと実感できる作品です。黒人が声をあげることは許されません。声をあげるためには白人を殺してしまうことまで実行しなければならない必然性が理解できます。

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