リチャード3世
書店でこの本を手に取った時は、エルサレム付近まで遠征し、帰路でオーストリアのデュルンシュタイン城に幽閉されたイギリス国王の話だと思っていました。中東を舞台とした戦記を期待していたのですが、全く異なる朝廷内での権力闘争の物語でした。
幽閉されたのは12世紀のリチャード1世であり、ブランタジネット朝の2代目国王です。この本(戯曲)の主人公のリチャード3世は、15世紀にブランタジネット朝が滅んだ際の最後の国王です。
横溝正史の『悪魔の手毬唄』では、唄の歌詞の通りに殺人が繰り返されていきます。『リチャード3世』では、国王に恨みを持つ王族や貴族達の予言、夢、独白が語られ、その通りの事態が生じます。
リチャード3世がボズワースの戦場で討ち死にする場面が壮絶です。日本では討ち死にした天皇はいないと思います。壬申の乱で敗れた大友皇子(弘文天皇)が自害した程度です。イギリスの国王は天皇と比べると、平和を享受できることが乏しかったようです。