歯周病の予防

学会・研究会 2020年06月02日

大阪大学歯学部予防歯科学講座の天野敦雄教授が、歯周病の予防について講演されました。内容を紹介しましょう。歯周病菌は歯の表面に付着する歯垢、すなわちデンタル・バイオフィルムの中で繁殖しますが、バイオフィルムには多数の細菌が共存し、相互に助け合って生きています。バイオフィルムを構成する細菌は約1000種類あり、多い人で約300種類を持つとされています。まず胎内の羊水から供給され、出生時に産道や母体の糞便からも移行します。バイオフィルムの細菌構成は10代でほぼ完成し、その後はほとんど変化しません。したがって、この時期までによい細菌叢を獲得することが重要となります。
歯周病の原因となる悪玉菌の代表格であるポルフィロモナス・ジンジバリスは、18歳以降に感染することが判明しています。つまり18歳までに善玉菌を培い、ポルフィロモナス・ジンジバリスの感染を予防できればよいのです。現時点でポルフィロモナス・ジンジバリスの感染を防ぐ予防薬やワクチンは存在しないため、感染や増殖を起こしにくい口腔内環境を整えることが実際にできる最善策といえます。
ポルフィロモナス・ジンジバリスの感染・増殖を促す要因となるものは栄養、湿度、嫌気環境、至適pHです。栄養源は血液中のアルブミンやグロブリン、ヘム鉄ですが、歯周病が進行すると歯周ポケットから出血が生じ、悪玉菌にこれらの栄養を供給することになってしまいます。歯磨きなどで口の中を常に清潔な状態に整え、よい細菌叢を保つことが何より重要となるのです。