蠅の王
無人島に不時着した少年達がたくましく生きていく物語です。これだけであれば単なる少年物の読み物なのですが、実は人間の奥底に潜む悪をえぐり出す強烈な物語でした。
蠅の王とは生け捕りにされ少年達に食べられた後に残った豚の頭です。少年達が恐れる未知の獣への捧げ物として、豚の頭だけは食べずに木の棒の先に刺して野に晒されたままになっていました。蠅がたかって真っ黒になった豚とサイモン少年が対峙し、心理的な対決をします。
蠅の王はサイモンら全ての少年達に潜む悪から逃れることはできないと脅しますが、サイモンはそれに打ち勝ち暗黒を克服します。ところが、その直後にサイモンは少年たちの手にかかって殺されてしまうのです。
ファウストとメフィストフェレスの戦いや「カラマーゾフの兄弟」の中の大審問官の作中作などがオーバーラップし、しっかりと心に残る作品でした。