愛の裏側は闇

読書・趣味・家庭 2015年06月03日



シリア人作家が42年間かけてドイツ語で書いた1086ページに及ぶ長編小説です。小説の舞台はシリアの首都ダマスカス、レバノン国境に近いマーラ村、ゴラン高原の入り口の町シャーガ、レバノンの首都ベイルートです。
物語は1850年から1970年にかけてのシリアの歴史を教えてくれます。イスラム教徒が多数を占めるシリアで、少数派のキリスト教徒が伝統を守って暮らすマーラ村での宗派間の葛藤、主人公ファリードの成長、修道院生活、反政府地下活動、強制収容所での虐待、対立する名家の愛する若い二人、秘密警察高官殺害の謎が描かれます。
「百年の孤独」「デイヴィッド・コパフィールド」「ロミオとジュリエット」「誰がパロミノ・モレーロを殺したか」を混ぜ合わせたモザイクのような小説です。内戦で混沌とするシリアの情勢を深く理解できるようになった気がしました。