チャンセラーズヴィルの戦い

読書・趣味・家庭 2021年03月25日

『勇気の赤い勲章』では南北戦争に志願した北軍の新兵であるヘンリーの目を通じて戦場の現実が語られます。1963年春のバージニア州チャンセラーズヴィルでの合戦には、北軍13万余、南軍6万の部隊が参加しました。南軍は名将リー将軍(大将)が指揮を執り、対する北軍はフッカー少将が指揮を執りました。
チャンセラーズヴィルはラッパハノック川とラピダン川の出合にある農場で、周囲の森は通過するのが難しい藪となっていました。最大の戦闘があった5月3日は川霧に覆われ、荒野のような森の中での戦いは物量で勝る北軍がその優位性を利用しにくい状況でした。結局、南軍リー将軍の作戦勝ちとなりました。
北軍の首都はポトマック川河口にあるワシントンDCです。一方の南軍の首都はワシントンDCの南に接するバージニア州の州都のリッチモンドで、ジェームズ川が流れています。
南北戦争の東部戦線はこの二つの首都の間の北部バージニアで延々と繰り広げられました。ポトマック川とジェームズ川の間にはラッパハノック川が流れていて、この川が両軍の最前線です。ほとんど同じ場所でフレデリックスバーグの戦い(1862年12月)、チャンセラーズヴィルの戦い(1863年5月)、荒野の戦い(1864年5月)と3度の戦いがありました。
小説では日時や場所、両軍の状況はほとんど描写されていません。一兵卒であるヘンリーにとっては戦闘の全体状況は全く分からなかったはずなので、描写がない方が真実といえます。戦闘では北軍の右翼、特にドイツ人部隊の劣勢やヘンリーが属するニューヨーク州兵歩兵連隊の加勢と撤退が描かれます。